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通販生活

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 カタログハウスの『通販生活』は、商品の紹介だけでなく環境問題や平和問題などを積極的に取り上げることで有名です。2005年の秋号では付録に岩波ブックレットの『憲法を変えて戦争に行こう』を付けて話題を呼びました。今号も平和問題を取り上げて「アメリカとのこれからの付き合い方」という特集を組んで、堀江貴文、弘兼憲史、豊下楢彦、天木直人、阿川尚之の発言を掲載しています。本会の豊下先生の発言は以下の通りです。

 昨年10月末に、米軍再編の中間報告と自民党の新憲法草案がほぼ同時に発表されたことは、偶然性を越えて問題のありかを象徴的に示しているようです。米国を代表する保守系雑誌『ナショナル・レヴュー』誌の7月号に掲載された「陽が昇るとき」と題するロウリー編集長の論文は、両者の関係をあからさまに語っています。米国に対して「イエスと言える日本を築きあげてきた」と小泉首相を絶賛する彼は、日米同盟の主要な障害となっている憲法九条を改正することによって、日本は集団的自衛権の行使も武器輸出も可能となり、自衛隊は北朝鮮を爆撃し中国を牽制し、インド洋から中東に至るまで、「目上のパートナー」である米国の軍事戦略を支えることができるようになるであろうと、大いなる期待を膨らませています。つまり、九条の改正によって、世界的に展開する米軍と自衛隊が「一体化」できる、という訳です。新憲法草案では、九条2項に「自衛軍の保持」が明記され、この軍隊は「国際的に協調して行なわれる活動」にも参加できると規定されていますが、これが集団的自衛権を意味しています。ただ注意すべきことは、国連憲章51条では「武力攻撃が発生したとき」に集団的自衛権が行使できるとなっていますが、ブッシュ政権はその規定を反故にしていることです。イラク戦争を正当化するためにブッシュ大統領は、フセインのように大量破壊兵器を製造する「能力」を持ち、米国に「悪意」を抱いている場合には先制的に攻撃できると主張しています。九条の改正で、イラク戦争のような米国の先制攻撃に自衛隊が「参戦」させられることになります。米軍再編で「日米一体化」が進むなかで、日本が「ノーと言う」ことは不可能です。  米軍再編も九条改正も、「中国の脅威」に対抗するために米国の指揮下で日米の「軍事的統合」を図ろうとするものです。しかし、米中関係を冷静に見ますと、台湾問題や民主化問題で対立していても、歴史問題を抱えていないため、パワーポリティクスで利害が一致すれば手を結ぶことができるのです。クリントン前大統領は日本を「素通り」して中国訪問を行ないましたが、今のブッシュ政権でも、他のどの国よりも中国との軍事交流は盛んで、首脳同士の訪問も絶えず、北朝鮮問題は中国の仲介力に委ねています。首脳会談さえできない小泉政権のもとで日本は、中国との「軍事対決」の面においてのみ役割拡大を担わされながら外交的にはひたすら孤立を深めていく、という道をつき進んでいるようです。  米軍再編の中間報告は、沖縄の辺野古に恒久的な新しい軍事基地をつくることで日米が合意を見たと述べています。戦後60年間、日米安保体制の犠牲を一身に引き受けてきた沖縄が、21世紀においても米軍に基地を提供し続けることを余儀なくされるという時に自民党が、米国に「押し付けられた」憲法を改正すると称して「自主憲法」の草案を公表したことは、究極のブラック・ユーモアと言う以外にありません。  日本の特定の地域が、このまま行けば1世紀以上にわたり外国軍の基地となるということが世界的にも異様で異常である、というところから再出発すべきでしょう。実はこの間、沖縄の海兵隊はイラク戦争に「参戦」して重要拠点のはずの沖縄に居なかったのです。  すでに経済的には「一体化」が進んでいる東アジアの交流の拠点として沖縄を位置づけ直すことによって、「押し付けられた」軍事的役割を克服して新しい安全保障の枠組み作りに邁進することこそが、日本が求めるべき「名誉ある地位」への道なのではないでしょうか。 とよした・ならひこ 関西学院大学法学部教授。1945年、兵庫県生まれ、京都大学法学部卒業。京大助教授、立命館大教授などを経て現職に。専門は国際政治論と外交史。著書に『日本占領管理体制の成立』『安保条約の成立』(共に岩波書店)、『イタリア占領史序説』(有斐閣)などがある。